1 魚説経
1.1 QRコード
1.2 あらすじ
現在の神戸は須磨あたりに暮らすある漁師の男は、漁師という仕事に嫌気がさし僧侶になります。そんな男がある日、ふと都見物をしてみたいということで京都に行きます。一方、京都に暮らす別の男は最近建てたお寺の住職のなり手を探していました。そんな二人が道中偶然出会い、京都の男が僧侶になった男をお寺に案内します。案内されたところで早速説経(説法)をするように言われた男。説経など知る由もなく途方に暮れた男はあることを思い立ちます…
1.3 説経の抜粋
いでいで鰆(サワラ)、説法を述べむと、烏賊(イカ)にも、鱸(スズキ)に煤けたる、黒鯛(クロダイ)の衣に、乾鮭(シャケ)色の袈裟を着し、水晶の数珠を蛤(ハマグリ)、高麗鮫(サメ)の上へ、熨斗(ノシ)熨斗1と鮠(ハヤ/ハエ)上がり、金海鼠(キンコ)を鳴らし、又鰐口(ワニゴチ)を泥鰌(ドジョウ)泥鰌と打ち鳴らし、まず説法を鯣(スルメ)なり。ちょうじも早く鯊(ハゼ)集まり、心の海月(クラゲ)を赤鱏(エイ)にし、又鯱(シャチ)2の如きも、鰻(ウナギ)の穴より出るが如く、ヌラヌラとして仏の御海苔(ノリ)を聴聞すべし。
それ人間の果敢なき命は海老(エビ)の眼を力となし、海月(クラゲ)が海に浮かみ漂うが如く、浮世を渡る人間世界なり。つつぎり3敬っても魚(ウオ)、ちぬ鯛(チヌダイ)教主、鮭(サケ)鰤(ブリ)如来。鰤(ブリ)子の菩薩に申して申鯖(サバ)、鰈(カレイ)教を習うとも、鯰(ナマズ)には習うべからず。ただ鯉(コイ)願うところは、鮒(フナ)落世界へ、鯒(コチ)々と招ぜられたきなり。
故に仏も、鮟鱇(アンコウ)の御海苔(ノリ)を成し給うも、これ皆小魚(ウオ)の為なれば、子たるもの、海鼠(ナマコ)、梭魚(カマス)子、雑魚(ザコ)、鱚(キス)子、諸子(モロコ)、鰤(ブリ)子、金海鼠(キンコ)、鮞(ハララゴ)4、炒子(イリコ)5、鮬(セイゴ)、かく大勢の数の子(カズノコ)も、親に対し鰊(ニシン)あらば、これ大いなる鱶(フカ)なり、誠に親の血引(チビキ)とて、糸より(イトヨリダイ)の様な細き心にて、雨の魚(アメノウオ)の如く涙を鱈(タラ)々と流し、鮫(サメ)々と泣く。されば観音経の文に曰く、干鯛(ヒダイ)平らげ、海老(エビ)観音力とも説かれたり。又心経の文に曰く、あのく蛸(タコ)三百三文鯛(タイ)。鰊(ニシン)般若、鮑(アワビ)陀心経。
今日の殺生これまでなり。雁木(ガンギ)河豚(フグ)毒、ぎちゅう(ギギュウ)一栄螺(サザエ)、鰹(カツオ)こしょ鯛(コショウダイ)ぐんりょう。生蛸(タコ)々々々々。鱧(ハモ)阿弥陀、鱧(ハモ)阿弥陀、鱧(ハモ)阿弥陀、、、鱧(ハモ)鮎(アユ)蛸(タコ)!